くもをさがす
作家の西加奈子は乳がんになった時「すごくオープンで、私が前例になるからみんな見といてや!って感じ」だったらしい。それはテレビ番組のオープニングで、そこでテレビを消しました。
それは、「私を参考にして、みんな見て!」なんてわたしは到底思えなかったし、今も積極的にがんのことを話したりはしない。それに治療をしていた時のことだけは、そこだけ別の人生みたいに、今でも人生の中でつながっていないから。
ただ、やっぱり気になったので西加奈子の「くもをさがす」を読んだところ、この本の中の西加奈子さんは、確かにわたしにもつながっていました。
私は、弱い。
日々そうやって自覚することで、自分の輪郭がシンプルになった。心細かったが、同時に清々しかった。
中略
「弱いなぁ、自分」
と、思った。もちろん情けなかったが、その情けなさを受け入れると、何かに触れるような気がした。自分がこの体で、圧倒的な弱さと共に生きていることに、目を見張った。
「くもをさがす」西 加奈子 著 河出書房新社 2023年
今でも、がんになったことを恥部のように抱えているわたしですが、それごと抱えて前に進もうと勇気が湧いてきます。
みじめではない
と思いたい。
だのにひとは
みじめさのなかではじめて生きる。
ー安永稔和「存在のための歌」
「くもをさがす」西 加奈子 著 河出書房新社 2023年
これ、めっちゃわかる!!
病気だけじゃなくて、人間関係とか加齢とかいろんな地味~な場面でぷちみじめを感じることがあります。
でもそんなとき、人の心情をおもんばかったり、自分のことを思いやったり、草木や四季の移り変わりに癒されたりします。
みじめさを不幸としない。
生きてるんだな~、わたし。