がんになった あなた と わたしへ

がんを経験したわたしの記憶 そしてこれから。

お父さんは認知症

父が初期のアルツハイマーとの診断を受けました。

 

わたしは、頭では理解できるのに心がついていきません。少なからずのショックと、この先のぼんやりとした不安。

 

子どもの頃の祖母の認知症の進行と重なってみえてきます。

「おばあちゃん、だいぶ分からなくなってるね」と親戚から言われても、祖母と一緒に住む私たちは「昔からこんなだったよね」とか「耳が遠いだけ」。

 

そんなとき、「マンガ ぼけ日和」を読みました。まさしくあの頃の私たちのように、認められない家族や認知症の前兆として怒りっぽくなったおじいちゃんが出てきます。

「あーそういことだったんだね」と納得したり、ほろりときたり。

 

そのなかで、「今日は何月何日!?」と試すようなことはしないでください、という言葉にはハッとしました。これ、なんでやっちゃうんでしょうね。

今日は分かるかもしれない、と淡い期待を込めて、または不安を払拭したくて言ってしまうのかな。

 

父の認知症が進行する前にこの本を読めて本当に良かったと思います。

これからどんなふうになっていくのか、コレを読めば対策バッチリ!なわけないけど、ことあるごとに手にとって教えてもらったり、慰められたりしていくことになりそうです。

「エンジェルフライト」を読む

米倉 涼子主演のPrime VIdeo「エンジェル・フライト」の原作本を読みました。

本はノンフィクション。

社長の木村 利恵さんはじめ、エアハース・インターナショナルで働く人々の熱く静かな情熱。過酷な環境でも決して手を抜かない、ひとつひとつの丁寧な作業。

著者 佐々涼子は自身の人生の中の「弔い」を見つめ、こうつづります。

 

エアハースの行っている遺体を搬送し家族のもとへ届ける作業は、悲嘆に遺族を向き合わせる行為だ。弔いは亡き人を蘇らせたりしない。悲しみを小さくしたりもしない。かえって取り返しのつかない喪失に気づかせ、悲しみを深くするかもしれない。だが、悲しみぬかなければ悲嘆はその人を捉えていつまでも放さない。私は心のどこかで知っていたのだと思う。国際霊柩送還の仕事が人を悲嘆に向き合わせることにより、その人を救う仕事なのだと。『エンジェル・フライト 国際霊感送還士』佐々 涼子著 集英社 2014年

 

 

弔いは、生き続ける家族のためにこそあるのかもしれません。

今まで、自分が死んだら散骨してもらいたいなーとすっごく気軽に考えていましたが、ほんとにそれでいいのか・・・。

 

そして人生のいろいろな場面で訪れる悲しみも、悲しみ尽くしたら、這い上がる!!!

「ボクもたまにはがんになる」

脚本家の三谷幸喜さんの「ボクもたまにはがんになる」を読みました。

2015年、大河ドラマ真田丸」の執筆時に前立腺がんを患う。

がん保険のCMにも出演されていますね。

 

主治医の穎川 晋先生との対談集

『ボクもたまにはがんになる』2021年 幻冬舎発行

 

 

前立腺がんの治療法の選択の場合、単に体にメスを入れるのがイヤ、という以外に勃起や射精という男性機能、「男の象徴」のようなものがなくなってしまうという恐怖心やプライドも考慮しないといけません。特に最近では、命や健康よりもプライドが先に来るケースも多いように思います。(穎川先生)

 

『ボクもたまにはがんになる』2021年 幻冬舎 より

 

前立腺。自分にはないから未知の世界ではあるけれど、乳がんや子宮がんと共通する「性(聖)の領域」ですね

 

それこそ僕のようにがんになるとか、検査に引っかかるとかでもない限り、前立腺という言葉に触れることがあまりない。風俗系で「前立腺マッサージ」みたいな言葉はあるけど、あれ、前立腺と関係ないですしね。男性にとっては、勃起や射精とか性機能とか「男のプライド」にかかわる重要なものなのに、ちょっとないがしろにされている気がします。(三谷氏)

 

『ボクもたまにはがんになる』2021年 幻冬舎 より

 

なるほど。その現状悲しくなってきました。

 

そもそも排便排尿というのは小さいときからきちっと躾をされるじゃないですか。ある意味、人間の尊厳にかかわるんです。ですからそこがいまくいかないと、一気に自信が崩壊してしまいます。(穎川先生)

 

『ボクもたまにはがんになる』2021年 幻冬舎 より

 

自分もいつなんどき、排便(排尿)困難になったり、世話をする側になったりしてもおかしくないのに、そういうことは考えたくないって思ってしまいます。

 

一方で、介護されるときに備えて脱毛する「介護脱毛」とか、先々の「しものこと」を考えて行動する人もいますね。

 

がん年齢、というものがあります。40歳~60歳。中年から少し上がったあたりです。階段でいうと、そこに必ず段差がありますよ、ということです。自分の体は自分ひとりのものじゃないと意識を高くもって、特にその時期を大事に過ごしていただきたいと思っています。

(穎川先生)

 

『ボクもたまにはがんになる』2021年 幻冬舎 より

 

更年期症状やミドルエイジクライシスとか。

そうですね。私はいま階段をのぼっています。

 

昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の「第35回 苦い盃(さかずき)」の中で

老いた巫女が源実朝にこう諭すシーンがありました。

 

これだけは言っておくよ。お前の悩みはどんなものであっても、それはお前ひとりの悩みではない。

はーるか昔から同じことで悩んできた者がいることを忘れるな。

この先もお前と同じことで悩む者がいることを忘れるな。

悩みというものはそういうものじゃ。

お前ひとりではないんじゃ。

決して。

『経営コンサルタントでワーキングマザーの私がガンにかかったら』を読みました

 

経営コンサルタントでワーキングマザーの私がガンにかかったら 
仕事と人生にプラスになる闘病記』
 山添真喜子 著 東洋経済新報社

 

著者 山添 真喜子さんは、1974年東京生まれ。
シンクタンクコンサルタントとして、そして2人の女の子の母として多忙な日々を送っていた中、
2018年急性リンパ性白血病で入院。
9ヶ月にわたる抗がん剤治療とその後の維持療法を経て病気を克服。
(巻末プロフィールより抜粋)

 

ビジネス戦略のように闘病期をロジカルにとらえる

視点が面白い本でした。

 

本の中に出てきた言葉


「アーリースモールサクセス」

左の脳にできた膿瘍が原因で、右手が麻痺した著者は、
「小さな目標=アーリースモールサクセス」を達成していくことで
リハビリのモチベーションを維持し継続していくことができたといいます。

右手でスプーンを使う→右手で眉を描く→お箸を使う→文字をボールペンでかけるようになる、など。
小さな目標を立ててひとつずつクリアしていく。


私の場合

抗がん剤の副作用がきつすぎる時期、

この副作用をあと3サイクル…とか考え出すと気が狂いそうだったので

 「とりあえずこの1サイクルだけはがんばろう

と毎回思っていたことを思い出しました。

 

 

髪がなくなる そのときの気持ち

抗がん剤により
いよいよ
髪が抜けていった頃

私は、なるべ悲しくならないように

「これは大型犬の毛の生え替わりの時期みたいなものだ」

と自分にナゾの言い聞かせをして、

せっせと抜けた毛の始末をしていました。


落ち込まないように
少しでも自分を保っておくために

感情にそっとフタをする。


きっとそれは
じぶんの心を守る
防御策だったんだと思います。

 

あんなにも
脱け続けゐし
髪たちは
悲しかつたらう
生きたまま脱けて


『たったこれだけの家族  河野裕子エッセイ・コレクション』
河野 裕子 著 中央公論社

 

最近
この句に出逢い、

あー、ほんとはあの時悲しかったよねー。
たっぷりツヤツヤした髪が毎日抜けて(T ^ T)


あの時の気持ちと
はじめて向き合った気がしました。

 

手をのベて
あなたとあなたに
触れたきに
息が足りない
この世の息が


『蝉声』
河野 裕子 著 青磁

 

いままで
短歌というものには
まったく興味がなく、


河野 裕子さんという
有名な歌人
知りさえしませんでしたが、


胸をつかまれるような
短歌の数々に
出逢っているところです。


生きてゆく
とことんまでを
生き抜いて
それから先は
君に任せる


『たったこれだけの家族  河野裕子エッセイ・コレクション』
河野 裕子 著 中央公論社


こう言い残せるように

生きぬきたい。

 

 

 

小学生向きの がんの本

『ある日、お父さんお母さんが がんになってしまったら』
Ann Couldrick 著 阿部 まゆみ 翻訳
PILAR PRESS


イギリス、オックスフォードの
病院から出版されている本の日本語訳です。


がんの親を持つ子どもに向けて書かれていますが、
患者である親本人にも優しさと勇気をそっと与えてくれます。


小学生頃から自分で読むことができそうな本ですが、

読み聞かせてあげるのもよさそうです。

がんってどういうこと?

どうしてなったの?

誰かに話した方がいいの?

死んじゃうの?

ぼく、わたしになにができるの?

ときどき忘れちゃうのは、いけないことなの?


子どもの(もしかすると大人も)
わきあがるいろいろな疑問、不安に

丁寧に語りかけてくれます。

自分のがんを 子どもに伝える 反応編 

右胸  乳がん

HER2 陽性

ステージ 2A

 

術前化学療法が始まる

1週間ほど前に、

小4の息子と小2の娘に

 

がんのこと

治療のこと

これから、何が変わって

何が変わらないのかを

 

画像を混じえて

話しました。

 

小4息子の反応は

がんって死ぬ病気なんでしょう!? 学校の図書室でがんの本読んだことあるよ!

 

まさかお母さんが、がんになるなんて、思いもしなかった

 

この髪がなくなっちゃうの...(とわたしの髪をなでる)

 

がんって、うつる?

 

小4ともなると、

それなりに、がんの知識、情報があるんだなーと思う一方で、

 

がん=死って

 

わたしが子どもの頃から

子どもが持つがんのイメージって変わらないんだ!

(少なくともうちの場合は)

 

こんなに医学は進歩してるのに・・・

と少し衝撃でもありました。

 

一方、

小2の娘はというと、

 

「がん?????  がんってなーに?」

 

娘はがんって言葉も聞いたこともないんだ!

と、それはそれでびっくりしました 笑

 

少々、頭でっかちの息子が

「がんってね、細胞が自分勝手にあばれだす病気なんだよ!」

と説明すると、

 

「サイボーってなに???」

ますます、頭の中はハテナがいっぱいのようでした。

 

病気のことや手術のことは

あまりよく分からなかった娘が一番不安そうだったのは

 

お母さんが入院する

ということ。

 

入院するのは

6ヶ月もあとのこと。

 

でも

娘にとっては

何日先、何ヶ月先のことであっても

 

一大事に変わりはないんですね。

 

術前化学療法を続けている間も、

娘はときどき

「お母さん、健康診断なんて受けなきゃよかったのに。そしたら入院しなくて済むのに」

えー!!!

子どもの発想って衝撃的。

 

健康診断で見つけてもらってなかったら

お母さん今ごろ

ますます入院してますがな。

 

と、つっこまずにはいられませんでした。

 

やわらかいテイストの絵本ながら、闘病の様子はけっこうリアルな描写。